11:00(くらい)

キャビン(部屋)のドアが開く。

そこにはリエル(仮)が。

俺の部屋の担当のハウスキーパーのホンジュラス人。
推定50代。
めちゃくちゃ仲良し。

いつもジョークを言い合いながらケラケラ笑う仲なんだけど
たまに生活で困ったことがあると必ず俺のとこに来るリエル。

「カメラのデータを綺麗にしてくれよ〜」

「電子辞書をスペイン語表示にしてくれよ〜」

「チパコプターが撮ったドローン映像のデータくれよ〜」
などなど。

で、真剣な顔してるから
「また何かあったのかなぁ?」と思ってた時

「今朝、女房が死んだ」

。。。

約2週間前に手術をしたリエルの奥さん。
その手術の前後もそわそわしながら顔を強張らせながらリエルは仕事していて。
会うたびにその話をしていて。
「心配してくれてありがとう」
といつも俺に微笑みかけ。
その後、術後の経過を聞いても特に何かあったって言ってなかったから
勝手に大丈夫なんだと思っていたんだけど。。。

「女房が死んだショックで息子も娘も倒れてしまって
娘はそのまま入院してしまった。
家族はめちゃくちゃだ」

。。。

涙が溢れるリエル。

この数週間wifiもまともにないから状況を知りたくても、
ただただ家族の声が聞きたくても聞くこともできなかったんだろう。

そして今日、自分の奥さんが亡くなってしまったことを知っても
朝から悲しみに暮れる時間もなく、誰にも話もできずに部屋を掃除していたんだろう。

俺だったら何もかも投げ出すに決まってる。
掃除なんてしていられない。

俺には想像もできないほど辛いだろうけど。
仕事を続けていた時にどうしようもなくて俺の部屋にきてくれたんだろうね。

何にも言葉をかけてあげることもできなくてごめん。

1日でも早くチケットを手配できて、奥さんに会えるように祈ってる。

合掌。